Heidenhain iTNC530
■ 工具交換指令2012.5.24

NCデータ概要の
https://www.kazuban.com/bbs/heidenhain/heidenhain.cgi?mode=main&no=2

・シーケンス番号の25
 「TOOL CALL 22 Z S2590 DL-8」
 「TOOL CALL」ツール交換指令です。動きは「T22 M06」
 と同じような、
 T22番とのツール交換ですが、内容はだいぶ違います。
 もしかすると、ツールに関する考え方がHEIDENコードと 
 FANACなどのISO-Gコードとの一番の違いかもしれません
 ISOコードは基本的にはツール番号と補正情報
 (径、長、長補正、径補正など)は別に管理しています。
 したがって、交換したあとに、G43H01やG41D01のように
 その工具に補正情報を指示する必要があります
 逆に考えると、交換した工具が何であれ、その後の
 HやD番号で自由に補正できる と言う事が言えると
 思います
 HEIDENHAIN は添付画像の画面
 (実態は下記のようなテキストファイル)で
 工具毎に管理されています
 したがって、ツール交換した時点でどのような工具
 (長さ、径、補正など)をつかんでいるかを制御装置は
 知っています
 逆に言うと、ツール交換した後には、このツールの情報
 (長さや径など)は変更できません
 これは、ツール表を変更しただけでは、交換済みの工具には
 反映されないので、再度TOOL CALL を実行する必要があります


T__NAME..... L........ R...... R2..... DL..... DR..... DR2.... LCUTS.. ANGLE..
0__ ________ +0_______ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ 0_______
1__ DRIL-6.5 +80______ +0.5___ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +90_____
2__ BALL-4.. +155.7646 +2----_ +2.0___ +0.03__ +0_____ +0_____ +0_____ +10_____
3__ RADIUS12 +133.0471 +6_____ +0.5___ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +3______
4__ FLAT-4.. +110.0215 +1.985_ +0_____ +0.01__ +0.02__ +0_____ +0_____ +90_____
4.1 FLAT-4.1 +110.0215 +1.985_ +0_____ +0_____ -0.01__ +0_____ +0_____ +90_____
5__ BALL-3.. +113.0645 +1.5___ +1.5___ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +0______
6__ FLAT-2.5 +100.3560 +1.25__ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +0_____ +0______
7__ BALL-4.. +115.2890 +2_____ +2_____ +0.01__ +0_____ +0_____ +0_____ +10_____

実は、ツール表の項目はこんなに少なくありません。全部で30項目ぐらいはあると思います
ただ、実際に全部を使用する訳ではありません
上の表では、
「T4」 の工具は「名前:FTAT-4」「長さ:+110.0215」「半径:1.985」「コーナーR:0.0」
「追加の工具長:+0.01」「追加の工具半径:+0.05」「切込み角度:3度以内」
を表しています。
ISOコードに対応させると、「工具長補正 = L + DL」 「工具径補正 = R + DR」です
この、DL や DR の情報は、円切削サイクルやヘリカルタップサイクルなど、ハイデンが持っている
サイクルコードでも参照されます。したがってヘリカルタップサイクルで、
DR を変更してネジ径を補正しながら加工する事などが可能になります。

また、一つの工具に複数の情報を持たせたいときには、T4.1 のように枝番で追加管理します
具体的には、コントローラでT4 をコピーすると、T4.1 ができます
そこで、変更した箇所(DL や DRなど)を変更します
TOOL CALL T4.1 を実行すると、実際の工具はT4番と交換しますが、情報はT4.1を参照します。

TOOL CALL には、T番号だけでなく、他の情報も付加できます

「TOOL CALL 22 Z S2590 DL-8」

この例では、「Z」は、スピンドル軸の指示です。通常マシニング系ではZになると思います
「S2590」は回転数です、「F***」で送りも指定できます
「DL-8」は、追加の工具長補正値です。
最終的には、このTOOL CALL にプログラム時に指定した値と、ツール工具表の値の合計で
補正します
この例の場合の「DL-8」はCAMが付加してものです。
具体的には、CAMの設定で、ボールエンドミルφ16を使用する加工で
ボールエンドミルの中心でパス出すように指示してあったので
実際の加工の場合、NCデータの指令値よりも、Z方向に工具半径分(8mm)下げる
必要があります。それで、「DL-8」が自動的に付加されています
当然、ISOコードの場合でも、ボール中心でパスを出した場合には、工具位置をZ方向へ
ボール半径分調整する必要があります。この場合、機械側で補正するか
変数(#)やマクロ等でプログラム化する事も可能ですが、TOOL CALL に DL-8 を付加する
ほうが遥かに楽なはずです。

このように、Heidenhainの工具交換は単純にそのT番号のツールを持ってくるだけでなく
その工具の情報も持ってくるところが、ISOコードとの大きな違いです
したがって、一旦工具交換すれば工具長補正は完了しているので、プログラム上だけでなく
MDIでもハンドル操作でも、座標系の任意のZの位置に工具の先端を移動できます
たとえば、ハンドルでZ0の位置に表示座標を合わせると、ワークのZ0の位置に工具先端がきます
これは工具でけでなく、タッチプローブでも同様なので、ワークの任意の位置を
マニュアルで測定し、ワークの座標系からの値として結果を得る事も可能です
さらに、プレーンサイクルのような傾斜面指令モード中でも同様なので
傾斜軸を使った場合でも、ハンドルで任意の位置に工具先端を持って行く事も可能です


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